新しい家族

当番日誌を書き上げた小学3年生の頃の私は、急いで帰り支度を始めた。
今日は、お母さんが帰ってくる日だ。
学校の門を飛び出し、家に向かって駆け出した。

閑静な住宅街を抜けると、大きな森林公園がある。
この公園を横切ると、近道になるのだ。

広場では、数人のクラスメイトが遊んでいた。
「今日は遊んで行かないの?」
と誘われたが、断った。
だって、今日は、大事な日だもの。

1週間前の真夜中、突然、私は起こされた。
お父さんとお母さんが、慌ただしく動き回っている。
寝ぼけ眼をこすりながら、なぜ起こされたのか分からず、フワーンとしていたら、お父さんに抱きかかえられて、外に連れ出された。

「靴は?」
「履かなくてもいいよ」

え?
ますます、意味が分らない。
私は靴も履かず、パジャマのままで、車に乗せられた。
間もなく、お母さんも乗り込んできた。

「お母さん、どこへ行くの?」
「病院だよ」
「私、こんな恰好でいいの?」
「車から降りないから、大丈夫だよ」
「お母さんは?お母さんだけ行くの?」

そのとき、大きな荷物を抱えたお父さんが運転席に乗り、
「じゃあ、出発するよ」
と言った。

車は、真夜中の道を走り始めた。
理由は、分からなかったが、お母さんの膝枕と、車の心地よいエンジン音とその振動によって、私は、いつの間にか、睡魔に負けていった。

「朝だよ。起きて」
翌朝、私はお父さんに揺り起こされた。
私は私の布団の中にいた。
昨夜の出来事は夢だったのだろうか。

「ご飯食べて。お父さんが作ったんだぞ」
とお父さんが言った。
食卓には、ご飯、味噌汁、目玉焼きが並んでいた。

「お母さんは?」
「お母さんは、病院」
「どうして?」
「妹が生まれるんだよ」

私は、今、走っている。
木漏れ日がちらちらゆれる森林公園を。

今日はお母さんが赤ちゃんと一緒に帰ってくる日だ。
私に妹ができるのだ。

5月の風が私を押してくれる。
今日から、家族が増え、新しい生活が始まる。

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