自由な鶏さま

通勤の行き帰り、木が生い茂った空き地の横を通る。
そこを通る人の間でひそかに有名なのが、その空き地の向かいの家に住む鶏である。
一体どういうわけか放し飼いにされており、空き地の林がテリトリーのようだ。

彼(雄鶏である、前に鳴いていたから)は、夏場の日中のごく暑いときを自分の家の小屋で過ごす以外は、たいてい向かいの空き地で色々とついばみながら暮らしている。
別荘である。
家持、別荘つきのまさにトリ貴族。

彼自身もアイボリーの羽毛に、ところどころ漆黒の黒や黄金色を流し込んだ、実に優美な装いである。
やはり高貴なトリは違うのである。

よく道路の端にも出てきて、なにやらココココやっている。
見ているといたくかわいいのだか、ちょっと心配でもある。
特に、自転車でその横を通ったりする時はどきどきする。

万一しゃっと道に飛び出してきたらどうしよう。
そんな俊敏な動きではないから大丈夫だと思うが、鳥のあの予測不能な首の前後運動を見ていると、一概にないとは言えず不気味だ。

よく見ていないで踏みつけてしまったらどうしよう、とか思うのだ。
仮にも家持の彼だから、家の人にも申し訳が立たない。
そんな訳で、彼のテリトリーの道路を通る時は、できるだけ遠いところの端を、ちらちら様子を見ながら通ることにしている。

それにしても、彼はこんなところにいてよく逃げ出さないものだ。
犬にしても鳥にしても、みんな鎖から解放されればどことでもいってしまうものだと思っていた。
でも彼は絶対にここから離れないのである。
恐ろしく快適な別荘なのだろうが。

そして今日も、彼は別荘の空き地にいる。
なにやらついばんでいる。

とある筋から得た情報では、彼は夜になると母屋へ帰宅するらしい。
そこから、朝になると空き地のほうへ出てくる。
そうしてまた夜になると母屋へ戻る。
そうやらあそこは別荘ではなく、勤務地であったようだ。

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